東北活動第二弾報告書

去年の年末。龍馬塾は再び東北へ出発しました。今回は少年たち7名が中心の旅。同行する大人は最大で4名。時間によっては1人のみで7名を連れて移動もありました。最も大きな目的は、東北で何が起こったのか、そしてどんな状況なのかということを何のフィルターも通さず生で見聞きし、感じてほしいということでした。さらに、地域の方々とふれあい、交流を持ち、そこからいろいろと子どもたちなりに感じてほしいと願っていました。

初日、まずは岩手県陸前高田市の市役所に向かいました。ここは夏も最初に手を合わせた場所でもあり、今回もここで心を引き締め、活動したいと考えてました。

バスが山間を抜け、海が近づいてきたところで景色が一変。前回夏に東北活動をしたメンバー2名以外は全員がその景色に圧倒され、外をただただ眺めているばかりでした。前回山積みにされていた車や瓦礫などがかなり減り、復興へ向けての活動が行われていることはわかりましたが、そのスピードはやはり遅々とし、思うように進まないのだろうと感じました。車や瓦礫が減った分、何もない平らな土地が遠くまで続いていることがはっきりと見え、その分さみしさは大きくなった・・。そんな風にも感じました。

市役所に到着し、車を降り、改めて現状をまざまざと見せつけられた子どもたちは、どの子も一様に動揺を禁じ得ないようすで、中には涙を浮かべる子もいました。普段からとても感受性が強く、素直な子は、最初は市役所に近づくことさえできないようでした。

皆がそれぞれの思いで手を合わせ、その後、陸前高田市内の丘のふもとでたき火をされていた一人の男性と出会いました。その方の話は、決してテレビや新聞で報道されることのない、けれどまぎれもない真実ばかり。子どもたちも疲れており、男性の話をしっかり最初から最後まで聞ける子はいませんでしたが、男性の話に憤りを覚えていた子もいました。これが現実。されどそこに明確な見通しを見出し、踏ん張る男性の姿勢には感動すら覚えました。

翌日。大船渡の仮設住宅を訪ね、地域の方々と集会所で交流会に参加しました。

一晩経ち、落ち着いた子どもたちはすっかりいつも通り(もちろん、心根への影響は確実に芽を吹いていましたが・・)。龍馬塾の子どもたちはどれをとっても屈託なく、素直。また、人一倍感受性が強く、繊細かつ大胆。そんな子たちなので、名刺交換をした後は、風船で遊び、テレビを付け、ゲームを始め、大声でさわぐ・・。でも、そんな彼らの姿をありのまま受け入れてくださり、帰りには全員と握手を交わし、熱烈に歓迎していただきました。というのも、彼らの屈託ない姿勢は時に異文化交流をスムーズにする力も持っています。屈託なく話しかけ、一見どうでもよいような質問をすると思ったら、ぎくっとするような本質を突く質問を投げかける。当然、“タメ口”で(笑)。ありのままの素直な姿。それが良かったということなのでしょう。子どもたちのそんな中にあって、ただ一人、メモ帳を広げ、ずっと席に着き、話を聞いていた子もいたことは明記しておきます。

活動3日目。

この日は宮城県仙台市の美田園の仮設住宅を訪問しました。

午前中から集会所の大掃除を手伝うのが目的です。ここでも、子どもたちを快く受け入れていただき、終始笑顔が絶えない、楽しい時間を過ごすことができました。

到着するとすでに大掃除が始まっており、子どもたちもすぐに雑巾を渡され、各自がそれぞれの掃除に。窓掃除、トイレ掃除、床掃除に机運び、座布団セッティング等々。子どもたちは役割があれば喜んで引き受け、現地の方々にもどこを掃除したらいいか尋ねながらなかなか歯切れよく掃除をやっていました。なんだかんだいって役割があること、頼りにされることが好きな子どもたちは、力仕事も率先してやってくれ、現地の方々にも非常に喜ばれました。話を伺うと、学校の遠いこの仮設住宅地には子どもたちはほとんどおらず、子どもの声もあまり耳にしない。そんな生活が続いていると言います。雰囲気を明るくすることなら大の得意の龍馬の塾生。騒がしいといったほうが適切かもしれませんが、和やかににぎやかに掃除が進んだことは間違いないところであります(笑)。

さて、掃除が一段落し、みんなで引き続き交流会へ。現地の方々、龍馬の面々と改めて自己紹介をしながら笑いを取りながら。。とても楽しい時間を過ごさせていただきました。

自由な時間の中、龍馬塾の塾生たちが目をつけたのはけん玉。そこでけん玉大会が始まるのでありました。中でもけん玉が得意な二人の対決は、なかなかの名勝負で、自然と大人たちが勝負の行方を見守るかたちになり、一緒に一喜一憂、応援をしていました(笑)。

その後、リーダーと塾生1名が震災で息子さんを二人亡くされたお年寄りの夫婦の個宅にお邪魔させていただきました。震災の悲惨さ、恐ろしさ、そうした現実をまざまざと見せつけられ、塾生もただただうなずいて聞くばかり。生々しい体験談に、その時の写真、そして亡くなった息子さんお二人の遺影や遺品を見ながら、子どもたちが何を感じたのか。推し量ることもできませんが、じっと話を伺うその姿を見ると、大きな糧にしているに違いないと確信するのでした。

こうして、3日間の東北での多種多様な活動を終え、子どもたちはまた帰途に。

子どもたちが何を得たのか。どんな糧にしているのか。それがわかってくるのはもう少し先のことでしょうが、変化の兆しを楽しみに待つ。それが今の龍馬塾の大人たちの楽しみでもあります。